ネバダ州とユタ州の堺『WENDOVER』を目指し西から東へ400mil=640kmほどの道のりだ。
この辺りは緯度で言うと北海道とほぼ同じ位置なので2月の北海道をバイクで走ることを想像してみれば寒さも大体の察しはつくだろう。日差しはあっても極寒だ。
とにかく延々と続くフリーウェイ。
店やスタンドも100km以上走ってやっと有るか無いか。
交通量も極少なので道なりにアクセルを開けていくと気がついた時には200km/hを超えていることもしばしば。
メーターはもちろんマイル表示だがいつもの習慣で100近辺で巡航してしまう。他の車と足並みを揃えると大体80mil=125km巡行が良さそうだ。
日本の高速道路ではほとんど感じなことだが、とにかく風がすごい。日本の高速は大抵両サイドに壁があり、道路も山間部を通っていることが多い為走行風以外はあまり考えなくても良い。
しかし、アメリカのフリーウェイは平地の真ん中を通っていて遮る物が何も無い。
100kmを超えると前方からの走行風だけでも体制を保つのに体力を使うが、突如、左右や後方から突風が吹く。何の前触れもなくいきなりだ。
その車体も体も暴れ1車線横に押されてしまう事も多々ある。常にニーグリップをして脇を閉めておかないとかなり危険だ。
行き交う車の半数は10mはゆうに超える長距離トレーラーだ。長いものはコンテナを2個牽引したもので20mクラスの車両も走っている。横幅も日本のトラックより随分でかい。
このマンモス級のトレーラーが120km〜160kmで走行していると100m後方を走っているだけで走行風が乱れて自分の車体が暴れ出す。近づくとその風圧は凄まじく並走なんてできたものでは無い。トレーラーを抜く時や抜かれる時も集中していないと荒れ狂う風圧で突き放されるばかりではなく巻き風であの大きなタイヤ目掛けて吸い込まれてしまいそうになる。風や空気の流れは目に見えないので透明人間に左右や後ろから突き飛ばされるようなものだ。感覚が慣れるまではかなり危険を感じた。トレーラーは迷わずゴボウ抜きする方が無難だ。
1〜2時間おきにスタンドがあれば給油をまめに行う。次で入れればいいや!なんて手を抜くと大事になりかねない。
っと言うより、実は既に僕も小さな町で1箇所給油に寄るのが面倒で次に回した結果エンプティーギリギリになり、恐怖を味わったからだ。
フリーウェイ沿いのスタンドは大きく充実している。ガソリンを入れるだけではなく、食事もできるしホームセンター並みに色々なものが揃う。この辺りの寒いエリアでは薪なども売っている。
フリーウェイを降り給油がてら途中の小さな町に寄るのも楽しい。
時間の流れ方がゆっくりで僕のような大荷物のライダーは珍しいようで地元民からよく話しかけてもらえる。語学力は乏しいものの街中で出会う人々よりもゆったりと話し込むことができるのでとてもよい。
欲しいものがたくさんあったが今回はバイク旅が目的!荷物も増やせないので物は買わない。
そうこうしていると、すっかり陽は沈み街灯もないフリーウェイをひたすら走る。
この時点で今日もキャンプをすることは時間的に断念。
知らない土地でこの時間からキャンプ地を探すのは厳しい。特にこの時期はほとんどのキャンプ場がクローズしている。町についてモーテルを探そう。
夜になり気温はグングン下がり車載のI phonは充電ケーブルを繋いでいてもローバッテリーになる。あげくは突然フリーズして電源が落ちる。
これは日本の雪山でも経験済みなので想定の範囲内だ。
目的の『WENDOVER』まであと130km。
PM8:00頃。
あまりの寒さと給油で一旦フリーウェイを降りガソリンスタンドを探した。下道も街灯がない上に雪とアイスバーンで人気もなくライトの明かりだけが頼り。しばらく走りポツンと建つ小さなガソリンスタンドに立ち寄った。
実は日が暮れてから極寒のフリーウェイを数時間走っていると、知らない土地、極寒、暗闇、アイスバーンへの不安や恐怖心からか、思考能力が低下して変な眠気やボーッっとなる時間が続いていたので危険を感じての休憩だ。日本では感じたことのない初めての感覚だった。
バイクを降り給油を済ませ気温を見るとなんと!!
−17℃!!!!
そら意識朦朧となるわ!!
もはや冷凍庫の方がましかもしれないレベル。
もうこれ以上寒いとこはないはず!持参した最高レベルの防寒グッズを全て装着!!
上下靴ゴアテックス、ダウンジャケット、フリース、ヒートテック、ブーツカバー、ハンドルカバー、パウワウ、インナーグローブ、グリップヒーター!
そして準備段階で最後まで購入を悩んだ代物!!
高額なうえに、これまで『こんなもん着るのはダサい!』っと言い続けて来たコレ!!
上下電熱線ヒートウェアー!!
装備と給油を済ませ、さぁ気を取り直してコレであと130km走りきろう。
エンジンをかけ、ヒートウェアの電源をいれた瞬間、これまでの寒さが嘘のよう!
暖かい風呂に入ったかのような極楽感。身体も心も解けていく。
なんでもっと早く使わなかったのだろう。笑
そして鼻歌交じりで意気揚々とバイクを走らせ1時間後............。
ポケットで温め復活していたはずのI phoneなのにwifiを拾っていない。マップが動いていない。
あれ??
おかしいなぁ???
wifiルーターの故障かな?
出し入れの少ないルーターや貴重品はウエストポーチにまとめていたので走りながら腰回りをゴソゴソ.............。
あれ??
着込みすぎてどこにあるかわからない??
恐る恐るアイスバーンの路肩にバイクを寄せてもう一度ゴソゴソ..........。
もちろん荷物の中にも無い。どこを探しても無いんです。多分この瞬間がこれまでの人生で一番の絶望感!!
海外での鉄則、『パスポートは命の次に大切』
分かってるよ!そんなこと!!!
ひとしきり慌てふためいて、さぁどうしよう!?!?
冷静に考えてみたところ、最後にバッグを見たのはさっき着替えたガソリンスタンド。
置き忘れたのだろうか?
それとも、走行中に落としたのだろうか?
このどちらかしか無い。
置き忘れたと仮定して、
さっきのスタンドに戻ればあるとは思えない。
金目のものを落として戻ってくるほどアメリカが優しい国とは思えない。
しかも時刻からすると店は閉店しているかもしれない。
さらには、給油したスタンドの地名やEXIT noも全く記憶にない。
暗闇に中、勘でスタンドを探すしかない。
走行中に落としたと仮定して、
どこからフリーウェイに乗ったかわからないし、
フリーウェイ上でUターンはできないので反対から乗って戻ってまた乗ってを繰り返さないと行き来はできない。しかも街灯は1つも無く闇。路肩や下道は積雪かアイスバーン。
交通量は少ないものの猛スピードのトレーラーも走っている。
落としていても見つかる確率はかなり低い。
しかも運の悪いことに、バッグは迷彩色だ.........。
ここでさらに!後ろにパッキングしていたはずの厚手のロードマップまでなくなっている!!
これはきっとあまりに激しい走行風で飛んで行ったのだろう。
もちろんルーターがないので通信機器は全てアウト!
この時点で道しるべは全て失った分けだ。
冷静に考えると更に不安がつのる。
どちらにしても引き返して探すとなるとその移動距離分ガソリンも減る。
さっきの給油からWENDOVERまで普通に行けば優に足りるのだが、現段階で紛失地点から約80km離れていることを考えると、戻ってスタンドが閉まっていた場合WENDOVERにたどり着くだけの燃料は足りなくなってしまう。バッグも見つからずスタンドも閉まっていた場合最悪はそこらへんでテントを張って夜を明かすしかなくなる。夜を明かしたところで店員が保管していない限りバッグは返ってこない。
一番安全で確実な方法を考える。
この状況で一番選びたくない方法だが、幸い財布はポケットの中に有り、現金もカード類も一通りはある。なのでバッグを見つけることを捨て、WENDOVERでモーテルに入り、世が明けてから警察&大使館に連絡。きっと日にちはかかるが日本へ帰る事は出来る。
だが、USA TOURINGを二日目にして断念しサンフランに戻る形となる。
やはり、この状況下だと一番安全な方法を取るべきなのだろうか..........。
-17℃の暗闇でいつまで考えても仕方ない!ここにいたらトレーラーに引かれるのが落ち!
決断をして動こう!!
結論。
今から自力でスタンドを探し、無ければ野宿をして、明日の朝ガソリンを入れてフリーウェイ上を探し、それでも無ければ大使館に連絡しよう!!やれる事は全部やってからもう一度考えよう!!
そうは言ったものの、寒さ、暗闇、不安、恐怖で既にメンタルは崩壊寸前。電熱線ウェアーなんて何の効力も無し。心は温めてくれない。
ただただ涙をこらえ自分を自分で励まし、奮い立たせる。
絶対!見つかる!
絶対!大丈夫!
俺ならやれる!
信じるものは救われる!
ハンドルをぐっと握りしめ、歯を食いしばり、ひたすら自分に言い聞かせる。
バイクに乗っていて、ここまで苦しかった記憶は後にも先にもこの瞬間だけだ。
そして何度もフリーウェイを乗り降りして.........,
あ----------!!!!
ここ!!!ここ!!!!!
このスタンド!!!!!!
まだ営業してる!!!
着替えたスタンドを発見!!!!!!
そして入念に辺りを見回すと。。。。。
あれ!?!?!?!
もしかして!?!?!?!?!
ううぉぉっぉーーーーーーーー!!!!
あったドォーーーーーーーーーー!!!!
これは奇跡ではなかろうか!!
このエリアにはここしかスタンドがないので結構人の出入りがあるにもかかわらず、
約2時間もここに置き去り。
中身も何も手付かずでそこに鎮座!!
もう絶対手放さない!
戻ってよかった!!
アメリカ最高!!
そこから気持ちも晴れやかに一気にWENDOVERへ!
町の明かりが見えたのは日付が変わる一歩手前。
命からがらネバダ州とユタ州の州境 『WENDOVER』へ到着。
一人モーテルで祝杯のうまかっちゃん!これほど美味いうまかっちゃんは食べたことがない!間違いなく忘れられない1日になった。
予定を大幅に超え、
本日の走行距離500mil=800km超え。
お疲れ様!俺!!
時間の流れ方がゆっくりで僕のような大荷物のライダーは珍しいようで地元民からよく話しかけてもらえる。語学力は乏しいものの街中で出会う人々よりもゆったりと話し込むことができるのでとてもよい。
途中、ラブロックという町で出会ったトムというおじさんはバイクが好き、というより気狂でトライアンフなどいろいろ持っていて、今はVICTORYというアメリカンバイクをカスタム中で排気量は6000ccなんだとか。話の流れで家に来いよ!っと誘われ、時間が押しているので断ったが、時間があれば行きたかった。日本に何度か観光に来た事もあると言っていたので一応名刺を渡しまた会おう!っと言って先を急いだ。
ローカルエリアのアンティークショップやポーンショップを覗くと面白い物やレア物が破格で売られている。都心と違って日本人バイヤーも来ないので日本ではアンティークで売れそうなものがたくさん残っている。
嵩張らないものなら......。っと心揺らいだが、
でも1個買うとキリがないので欲望を断ち切って何も買わずに涙を飲んだ。
この時点で今日もキャンプをすることは時間的に断念。
知らない土地でこの時間からキャンプ地を探すのは厳しい。特にこの時期はほとんどのキャンプ場がクローズしている。町についてモーテルを探そう。
夜になり気温はグングン下がり車載のI phonは充電ケーブルを繋いでいてもローバッテリーになる。あげくは突然フリーズして電源が落ちる。
これは日本の雪山でも経験済みなので想定の範囲内だ。
目的の『WENDOVER』まであと130km。
PM8:00頃。
あまりの寒さと給油で一旦フリーウェイを降りガソリンスタンドを探した。下道も街灯がない上に雪とアイスバーンで人気もなくライトの明かりだけが頼り。しばらく走りポツンと建つ小さなガソリンスタンドに立ち寄った。
実は日が暮れてから極寒のフリーウェイを数時間走っていると、知らない土地、極寒、暗闇、アイスバーンへの不安や恐怖心からか、思考能力が低下して変な眠気やボーッっとなる時間が続いていたので危険を感じての休憩だ。日本では感じたことのない初めての感覚だった。
バイクを降り給油を済ませ気温を見るとなんと!!
−17℃!!!!
そら意識朦朧となるわ!!
もはや冷凍庫の方がましかもしれないレベル。
もうこれ以上寒いとこはないはず!持参した最高レベルの防寒グッズを全て装着!!
上下靴ゴアテックス、ダウンジャケット、フリース、ヒートテック、ブーツカバー、ハンドルカバー、パウワウ、インナーグローブ、グリップヒーター!
そして準備段階で最後まで購入を悩んだ代物!!
高額なうえに、これまで『こんなもん着るのはダサい!』っと言い続けて来たコレ!!
上下電熱線ヒートウェアー!!
装備と給油を済ませ、さぁ気を取り直してコレであと130km走りきろう。
エンジンをかけ、ヒートウェアの電源をいれた瞬間、これまでの寒さが嘘のよう!
暖かい風呂に入ったかのような極楽感。身体も心も解けていく。
なんでもっと早く使わなかったのだろう。笑
そして鼻歌交じりで意気揚々とバイクを走らせ1時間後............。
ポケットで温め復活していたはずのI phoneなのにwifiを拾っていない。マップが動いていない。
あれ??
おかしいなぁ???
wifiルーターの故障かな?
出し入れの少ないルーターや貴重品はウエストポーチにまとめていたので走りながら腰回りをゴソゴソ.............。
あれ??
着込みすぎてどこにあるかわからない??
恐る恐るアイスバーンの路肩にバイクを寄せてもう一度ゴソゴソ..........。
無い!?
無い!?!?
無い!?!?!?
無ーーーーーーーーーい!!!!!!
中には、
ルーター。
デジカメ。
$100紙幣。
エアチケット。
パスポート。
全て一緒に紛失!!!
もちろん荷物の中にも無い。どこを探しても無いんです。多分この瞬間がこれまでの人生で一番の絶望感!!
海外での鉄則、『パスポートは命の次に大切』
分かってるよ!そんなこと!!!
ひとしきり慌てふためいて、さぁどうしよう!?!?
冷静に考えてみたところ、最後にバッグを見たのはさっき着替えたガソリンスタンド。
置き忘れたのだろうか?
それとも、走行中に落としたのだろうか?
このどちらかしか無い。
置き忘れたと仮定して、
さっきのスタンドに戻ればあるとは思えない。
金目のものを落として戻ってくるほどアメリカが優しい国とは思えない。
しかも時刻からすると店は閉店しているかもしれない。
さらには、給油したスタンドの地名やEXIT noも全く記憶にない。
暗闇に中、勘でスタンドを探すしかない。
走行中に落としたと仮定して、
どこからフリーウェイに乗ったかわからないし、
フリーウェイ上でUターンはできないので反対から乗って戻ってまた乗ってを繰り返さないと行き来はできない。しかも街灯は1つも無く闇。路肩や下道は積雪かアイスバーン。
交通量は少ないものの猛スピードのトレーラーも走っている。
落としていても見つかる確率はかなり低い。
しかも運の悪いことに、バッグは迷彩色だ.........。
ここでさらに!後ろにパッキングしていたはずの厚手のロードマップまでなくなっている!!
これはきっとあまりに激しい走行風で飛んで行ったのだろう。
もちろんルーターがないので通信機器は全てアウト!
この時点で道しるべは全て失った分けだ。
冷静に考えると更に不安がつのる。
どちらにしても引き返して探すとなるとその移動距離分ガソリンも減る。
さっきの給油からWENDOVERまで普通に行けば優に足りるのだが、現段階で紛失地点から約80km離れていることを考えると、戻ってスタンドが閉まっていた場合WENDOVERにたどり着くだけの燃料は足りなくなってしまう。バッグも見つからずスタンドも閉まっていた場合最悪はそこらへんでテントを張って夜を明かすしかなくなる。夜を明かしたところで店員が保管していない限りバッグは返ってこない。
一番安全で確実な方法を考える。
この状況で一番選びたくない方法だが、幸い財布はポケットの中に有り、現金もカード類も一通りはある。なのでバッグを見つけることを捨て、WENDOVERでモーテルに入り、世が明けてから警察&大使館に連絡。きっと日にちはかかるが日本へ帰る事は出来る。
だが、USA TOURINGを二日目にして断念しサンフランに戻る形となる。
やはり、この状況下だと一番安全な方法を取るべきなのだろうか..........。
-17℃の暗闇でいつまで考えても仕方ない!ここにいたらトレーラーに引かれるのが落ち!
決断をして動こう!!
結論。
今から自力でスタンドを探し、無ければ野宿をして、明日の朝ガソリンを入れてフリーウェイ上を探し、それでも無ければ大使館に連絡しよう!!やれる事は全部やってからもう一度考えよう!!
そうは言ったものの、寒さ、暗闇、不安、恐怖で既にメンタルは崩壊寸前。電熱線ウェアーなんて何の効力も無し。心は温めてくれない。
ただただ涙をこらえ自分を自分で励まし、奮い立たせる。
絶対!見つかる!
絶対!大丈夫!
俺ならやれる!
信じるものは救われる!
ハンドルをぐっと握りしめ、歯を食いしばり、ひたすら自分に言い聞かせる。
バイクに乗っていて、ここまで苦しかった記憶は後にも先にもこの瞬間だけだ。
そして何度もフリーウェイを乗り降りして.........,
あ----------!!!!
ここ!!!ここ!!!!!
このスタンド!!!!!!
まだ営業してる!!!
着替えたスタンドを発見!!!!!!
そして入念に辺りを見回すと。。。。。
あれ!?!?!?!
もしかして!?!?!?!?!
ううぉぉっぉーーーーーーーー!!!!
あったドォーーーーーーーーーー!!!!
これは奇跡ではなかろうか!!
このエリアにはここしかスタンドがないので結構人の出入りがあるにもかかわらず、
約2時間もここに置き去り。
中身も何も手付かずでそこに鎮座!!
もう絶対手放さない!
戻ってよかった!!
アメリカ最高!!
そこから気持ちも晴れやかに一気にWENDOVERへ!
町の明かりが見えたのは日付が変わる一歩手前。
命からがらネバダ州とユタ州の州境 『WENDOVER』へ到着。
一人モーテルで祝杯のうまかっちゃん!これほど美味いうまかっちゃんは食べたことがない!間違いなく忘れられない1日になった。
予定を大幅に超え、
本日の走行距離500mil=800km超え。
お疲れ様!俺!!